僕はショパンに恋をした
「くれるの?」

そう言ったシオンに、俺は笑いながら返した。

「そんなに、俺の蕨餅見られたら、食いづらいだろ?」

えへへと、またシオンは笑う。

「ありがとう。」

シオンはそれを大事に大事に食べた。

甘い物を堪能した俺達は、店を出て渡月橋まで行くことにした。

「ねぇ、本当にご馳走になっちゃって良いの?」

後ろから、とことことついてきながら、シオンが言った。

「何が?」

「だって、僕、ワラビモチって、100円とか、200円とか、せいぜい500円くらいと思ってたから…。」

あぁ、値段を気にしてるのか。

「気にすんな。これくらい。」

「でも、僕、ひさぎに面倒ばかりかけてるし。本当は僕がご馳走するところなのに。」

「だから気にすんなって。それに…。」

俺は前を向いたまま、シオンに言った。

「俺一人だったら、ここまでは来れなかっただろうしな。感謝してんだぜ。」

後ろのシオンが、ふわりと笑った気配を感じた。

「それに…。」

俺は多分、耳まで赤くなっていただろう。

「ほら、あれだ。日本では、よくやるんだよ、おごったりとか。…その…友達には…さ。」

シオンは、そっか、と小さく返事をした。
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