総長が求めた光 ~Ⅱ壊れた歯車~【完】
掴む裾に自然と力が入る。
「意味・・分かんないよ。」
笑いも自然とこぼれる。
ヒサの香水。
桃のような甘い香りが、あたしの鼻から体全体へと染み渡る。
「マーキングなんてされやがって・・・。あの、クソギツネ」
「なにか言った?ヒサ。」
なにか聞こえたけど、よく聞き取れなかった。
ヒサの顔を見ると、少し赤くて。
「何でもねぇよ。」
右手で、無理やりあたしの顔を胸板に押し付けるヒサ。
その手は、やっぱり大きくて。
温かくて、安心できて。
この時間が、続けばいいのに・・・。