鬼~oni~
 私はひとり、小さな部屋に閉じこめられた。

 家事もなく、育児もなく、誰もいないこの部屋に、私はただぼんやりと、時間という愛撫に身を任せた。

 部屋から見える一本の木……

 木の葉が茂り、白い花を咲かせ、散らし、枯れて、

 木の葉が茂り、白い花を咲かせ、散らし、枯れて、

 木の葉が茂り、白い花を咲かせ、散らし、枯れて、……


 ある日、私の中で、ぱちんと何かが弾けた。 

 私の後頭部が、ぱかっと勢いよく開いたような感覚……

 あふれる涙はとめどなく……

 その色は、透明な水晶色。

 わけもわからず、泉のようにわき出す涙を私は止める術を知らなかった。

 見知らぬ男が、小さな女の子を抱えて立っている。

 懐かしい、懐かしい感覚……

 
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