先輩とあたし【完】

story*4



「聞いて~聞いて聞いて聞いてぇー」私は授業が終わってすぐに部室に向かった。
同じクラスではない亜美と満里子には今日の出来事はまだ話していない。
私は早く二人に聞いてほしくて走って部室に向かった。

「ん?何?」そこに居たのは稲森先輩だった。
「先輩…」私は気まずそうな笑顔を振り撒いて出ていこうとした。

「ちょい、待ってや」稲森先輩に掴まれた左腕。
稲森先輩に会った瞬間、昨日言われた言葉を思い出す。
そこに居るのが気まずくてすぐそこから立ち去りたいのに先輩は私から目を離してくれない。腕なんてすぐに振りほどけるはずなのになぜか振りほどけない。
それは稲森先輩の目が私を離してくれないから。

「あ、あのさー自転車どうなった?」稲森先輩もなぜかぎこちない雰囲気で話してくる。
「父が直してくれます。今日はバスで来ました…」下を向きながらそう伝えると稲森先輩の手は私から離れていった。
「そうなんや!!よかったな」さっきのぎこちない雰囲気をなくしたように元気に話す稲森先輩。

「あ、海藤と田中やったら水道でコップ洗ってたで」ニコっと微笑む稲森先輩。
「ありがとうございます…」私は先輩に一礼して部室を出た。

「変な汗かいた…びっくりした…」独り言を吐きながら亜美と満里子のところに走った。
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