先輩とあたし【完】
「伊織、本間にこれ、ロッカーで挟んだん?」部活の帰り道私の隣を歩いてるのは俊哉先輩だった。お互い自転車を押しながらゆっくり歩いて帰る。それが私たちの日課になっていた。分かれ道には偶然的に公園があって月曜日はそこでジュースを飲みながら二人で過ごすのも日課。
今日は月曜日。公園で話すと分かっていても二人はゆっくり公園までの道をゆっくり歩く。二人の時間が貴重だから。
「そうですよ~何回言ったら分かるんですか、先輩はー。」クスクス笑いながら先輩に笑顔を見せる。先輩の前にいるときは作り笑いをしなくても満面の笑みになってしまう。作り笑いなんてしなくていい…
「伊織は女の子やねんからちゃんと手も大事にしーよ。傷なんか残したらあかんで」
先輩は本当に優しい。部活以外では極力、女の人と話さないようにしているらしい。同い年のサッカー部の子が教えてくれた。
傷つけられても別にいい。こうやって先輩の隣に居て無邪気に笑えるならそれでいい。
「伊織っ」一時間ほど公園で話したあと先輩は私の名前を呼んだ。私は先輩の顔を見つめる。
「好きやで」そう言って私に優しいキスをする。
幸せだから…先輩にも心配かけたくないから。
別にいい。大丈夫。
私は先輩にキスされながらそんなことを考えていた。