5つの欠片
ゆっくり顔を離すと、ちづちゃんの不満そうな瞳が俺を見つめた。



「...もっと...もっと...」



腕を掴もうとする手をさっと避ける。
右手に持っていた水がグラスからこぼれそうになった。
ちづちゃんの手ががむしゃらに空を掴む。




「...これ飲んだらね?」




背もたれにもたれてるちづちゃんの口元にグラスを持って行く。
まるでなかなか薬を飲まない子どもみたいで、少し可笑しくなった。
顎を押して口を開けさせて水を流し込むと、素直にごくごくと音を鳴らす。




「ん...偉いね、ちづ...」




ちづちゃんの喉がごくんと動く。
やばい...
おもわず首筋に舌を這わした...



つい夢中で舐めてたら、ちづちゃんの口から水がこぼれ落ちた。
慌てて右手を戻すと、ちづちゃんが咽せる音が響く。




「ごめん...ちづちゃん、傾けすぎた...」



「やだ…やめないで...?」




ちづちゃんの手が俺の手を掴む。
うるうるの瞳が放つ視線が熱すぎて、溶けてしまいそうになった...




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