5つの欠片
メモがちゃんと挟まったのを確認して、俺はキッチンに移動した。



一歩入るとパンの香ばしい匂いに包まれる。
なんか落ち着くこの香りは俺のお気に入りだ。




俺は2つ並んだ淡い青と赤のマグカップから青の方を取ってコーヒーを注いだ。
もう一方は栞専用のマグカップ。




ちょっと前、栞が家に来たときに一際嬉しそうに紙袋から取り出したのがこのマグカップだった。




『可愛いでしょ?』って言いながら、自慢げに見せてくる栞は特別可愛くて…
ちょっとの間フリーズしてしまった俺を、栞は天使のような笑顔で見てた。






ちょっと前の出来事のはずなのに、それもだいぶ前のことのように思える。
本当に最近、時の流れが速すぎて困る。




そう実感する度に少し不安になる。
流れていくように過ぎていく日々の中で大切なモノを見失ってないか…




大丈夫だよね…?
栞…





俺は冷蔵庫を開けてバターを取ると、下の段の白い箱を見つめた。
最近駅前にできた可愛らしいお店のケーキ。




栞がお気に入りだって言ってたから昨日の仕事帰りにわざわざ買ってきたんだ。
喜んでくれるかな…?




小さな期待を抱いて、俺は朝食をぱっと済ませ急いで家を出た。





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