5つの欠片
無事に師である、村尾龍先生の定期演奏会が終わったのは19時だった。
壮大なスケール、伸びのある音、絶妙な呼吸の使い方…



やっぱり何度見ても村尾先生の指揮は素晴らしかった。




あの背中がぶるっと震える感覚…
重なり合う音で脳内を埋め尽くされる…




「峻、これお前も目通しとけ。今日使った曲だ。」



「あ、はい!ありがとうございます!」



演奏会終わりの片づけをしていると、村尾先生がそう言って楽譜を渡してくれた。
“ショパン ピアノ三重奏曲”



今日の演目の4番目に披露した曲だ…
俺の大好きなショパン。




「じゃあ、峻あと頼むな。」



「はい!お疲れ様です」



「お疲れー」




その言葉を残して村尾先生は行ってしまった。
今年で親父と同じ50歳になるなんて信じられないほど輝いて見える。




あの姿が目標…
あんな風にかっこ良く年をとりたい。




俺は持っていた楽譜を無意識にぎゅっと強く握っていた…






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