5つの欠片
一分、一秒でも早く帰りたくて、いつもより必死に片付けをした。
でも、結局演奏会場を出れたのは20時だった。




栞と約束してた時間は20時30分。
とてもじゃないけど30分じゃ家には帰れない。




はぁ…
また、待たせちゃうな…




せっかく会える日なのに、この日ですら時間を守れない自分が心底情けなかった。
どんなに気持ちが急いでも、電車は思うように進まない。




もどかしくて、いらいらは募っていくばかりだった。





やっとのことでマンションにつくと、下から部屋の明かりが点いてるのが見えた。
腕時計を見ると21時。




栞が居る安心感と遅れた罪悪感が入り混じる。




俺はそっとドアに手をかけて部屋に入った。
パタンっと閉まるドア以外、まるで物音がしない。




静かな部屋が空気を重たくする。
まるで誰もいないかのような静けさ…




まさか…いないなんてことないよな…?





「…ただいま、栞?」




俺は靴を脱ぐと、急いでリビングに入った。





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