5つの欠片
目に映ったのは、絨毯の上に座りソファに突っ伏したまま眠る栞の姿だった。
無防備に投げ出された手の中には、俺のあげたブタのストラップがキツく握られてる。




表情を見ただけですぐに分かった…
栞の透き通る顔に残ってる涙の跡…




栞…
泣いてたの…?





なんで…
俺が時間破ったから?
でも、今までそんなことで泣いたことはなかったし…


他になんかしたか…
朝のメールの返事がそっけなかった?




いや…、それもなんか違う気がする…




一瞬の内に頭の中で色んなことが駆け巡る。
だけど、一向に泣かせるようなことは思い出せなくて…




もしかしたら…原因は俺じゃない…?




寝ている栞の顔を覗くと、まだ目の端にうるうるした涙が溜まっていた。
長い睫が束になってるのが見える…




俺は栞の横に座って、前髪を手でそっと退けると、額に触れるだけのキスをした。
すると、栞はくすぐったそうに体を動かして、また同じ状態に戻った。




ふふ…可愛い…
ねぇ…起きてよ…




俺は栞の鼻を軽く摘むと、鼻先にもキスを落とした。





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