5つの欠片
静かな部屋の中で、舌足らずで喋る栞の声だけが響く。
肩越しに花瓶を見ると、色とりどりの花はやっぱり綺麗な姿にかわっていた。




俺は栞の肩から頭を退けると、栞の顔を両手で包んだ。




そっと目の端に溜まった涙を親指で拭う…
綺麗な涙…
何色にも染まらない、無色透明の泪…




栞の目を見つめると、自然に目があった。
不安そうな、悲しそうなその目に胸が締め付けられる…




「栞…どした?」




言葉だけが虚しく響く。
栞は下を向いたまま何も喋らない。



そして、まるで嫌なことを思い出したかのように下を向いて、怖がるように俺の背中に細い腕を回した。




俺の背中でブタの繋がった鍵がゆらゆらと揺れる…



栞…?
震えてるよ…手…



「大丈夫だから…俺、ここに居るよ?」



「…峻くん……」



「ずっと居るから…泣き虫だな、栞は…」




また泣き出してしまいそうな栞の目から涙を拭ってやる。
栞はゆっくりと俺の目を見つめた…





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