5つの欠片

「壁」

可愛いブタさんのストラップがゆらゆら揺れる。
あたしはその鍵を目の前に差し込んだ。



ガチャ、という効果音とともに目の前の扉が開かれる。




「おじゃましまーす...」




返事がないのは分かってるけど、いつも言ってしまう。



部屋の中はいつも通り峻くんの匂いでいっぱいで、少し安心した。




綺麗に片付けられたモノクロの部屋。
まるで峻くんの性格そのもの。




あたしは茶色のパンプスを脱いで、時計を確認した。



6時30分...
まだ2時間もある...




ぎゅっとブタさんを握りしめて大事に鞄の中にしまう。




ずっと側にいたいよ...
ずっと...ずっと...




あたしは何よりも先にいつもの場所に向かった。
窓際の壁に据え付けられた丸テーブルの上に花瓶が置かれている。



「今、お水かえてあげるね」



お花に話しかけて花瓶を持ちあげると、いつもの小さなメモが顔を出した。




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