5つの欠片
3.雅也×莉央

「不安」

広いベッドの上、今日も目覚めたら自分しかいない。
ついつい癖で横を見ちゃうけど、すぐに頭が回りはじめて納得する。




そーだ、そーだ…
今日まで莉央は海外なんだよね…




半年前ぐらいから俺は莉央と同棲をしてる。
初めは完全なる俺の片想いで、莉央は俺と同じ音大の弦楽器専修で2つ上の先輩だった。




楽器までまったく一緒で、俺は初めて莉央の奏でるバイオリンの音を聞いた時に一瞬で酔いしれた。




小さい頃からバイオリンを習っていたのに、こんな気持ちになるバイオリンを聞いたのは初めてだった…




あんな音が出せたら…




初めはそう思ってた気持ち、言ったら憧れのようなそんな気持ち。
だけど、気づいたらその気持ちは変わってた……





起き上がると、昨日の酒が残ってるのか頭がガンガンする。
最悪…二日酔いかよ。




水を飲もうと冷蔵庫に行って莉央が飲みかけのミネラルウォーターのペットボトルを取り出して、そのまま口をつける。




2つのコーヒーカップに、2つの箸、2つの茶碗…





キッチンを見るだけでもこれだけ莉央のものがあるのに、目の前に莉央が居ないのが寂しくてしょうがない…





< 38 / 110 >

この作品をシェア

pagetop