5つの欠片
結羅は手を拭くとようやく近づいてきた。
静かな部屋に結羅の足音だけが響く。



久々に近くで見た結羅はやっぱり魅力的で…
理性がとんでいきそうになる。



後一歩ぐらいかな…




適当に目星をつけると、俺は結羅が一歩踏みだした瞬間に結羅の右腕を掴んで思いっきり引き寄せた。



「あっ...」




腕の中で結羅が言葉を零す。
すっぽりと腕におさまる結羅の体。



結羅は抵抗せずに、俺の回した腕に触れた。
長くて細い指が、温かい掌が、俺を受け入れてくれる。




「やっと来た...遅いよ」

「お鍋に火かけてたの、見てたでしょ?」

「...うん」

「じゃあ、放して?」

「いや…」



そう言って、俺は抱きしめてる腕に力を込めた。




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