5つの欠片
静かな空間が雰囲気を圧迫する。
じっと見つめられて、全て見透かされてるんじゃないかって気がした。




おもむろに、まぁくんがダイニングのイスをひいて立ち上がった。
イスが床と擦れて悲鳴のような音をあげる…




まぁくんはしなやかな動きでソファまで移動した。
軽やかに座る姿は、どこかの雑誌で見たような恰好によく似てる。
長い脚や腕、弦を押さえる綺麗な指…
スタイルの良さに、また引け目を感じてしまう…





どうしてあたしを選んでくれたの…?





頭の中にぽっかりと浮かんでくる疑問。
もう、付き合ってから何回思っただろう…
ふとした時に浮かんでは、泡のように消えていく…
…ううん、違う
本当は無理やり消してるの…、あなたの傍にいたいから……





「莉央…、おいで。」




甘い声があたしを呼んでる…
不安と期待が入り混じる…
まぁくん…、ごめんね……





イスから立ち上がってソファに近づくと、まぁくんは満面の笑顔であたし手を引っ張った。
まるで子どもみたいに太ももの上に座らされて、ぎゅーと抱きしめてくれた。
まぁくんの顔があたしの肩の上に乗って、途端に胸が苦しくなる…






耳たぶを吸われて、まぁくんの舌が器用に動く。
くすぐったくて、恥ずかしくて…
でも、それ以上に離れたくなかった……






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