5つの欠片
それから1週間、まぁくんはできる限りあたしとの時間を作ってくれた。
1日1日、過ぎていく日に甘さは比例していく...
離れたくない...
声に出さなくても、痛いほどそう伝え合う想いが膨張していった...







...出国の日
まぁくんは朝早くからの仕事で先に出かけなきゃいけなかった。




「ごめんね...
 見送れないけど、良い子でいてね。」





玄関で靴を履きながら、まぁくんはそう言った。
そして、あたしの鼻に丁寧にゆっくりキスしてくれた。




腕を捕まれて、軽々と抱きすくめられる。
思わず泣いてしまいそうで下を向くと、赤いスリッパが目に入った。
コンクリートの玄関にこのスリッパは似合わない...




まぁくんは微動だにしなかった。
まるで全てを体に刻むように、抱きしめたまま動かなかった。




お腹の前にある角張った手に手を重ねる。
あたしの大好きな手。
勢いがあって、飛び跳ねるような楽しい演奏を支える大事な手。





「りおちゃん...好きだよ.........
1ヶ月後に会おうね......」




まぁくんは耳元でそう囁くと、ドアを開けて、太陽みたいに笑って行ってしまった。







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