5つの欠片
「んで、どーなの?作品は順調?」



詩が淹れてくれたブラックのコーヒーに口をつけながら聞く。
詩は横で自分のコーヒーに砂糖とミルクをたっぷり注いだ。




そんな入れたら糖尿病になるんじゃないの?
そんなことを毎回思ってしまうほど、詩は無類の甘党でコーヒーの色も髪の毛と同じような茶色に染まっていた。




「うーん、一応順調!だけど、今回も個展ギリギリに完成しそう…」




またかよ…
やっぱり今回も帰ってきて良かった。



俺は詩のアトリエ部屋の方を見た。
散らかった絵具やらキャンパスやらが目に入る。




「個展、今週の日曜でしょ?ちゃんと食ってんの?」



「うん、大丈夫!食べてるよ。」



「ほんとかよ…まじで心配。」




詩は芸大に通う大学生でとにかく作品ばっか作ってる。
特に、グループ個展っていうのが定期的にあって、その時の詩の狂いようはハンパない。




なんも食わないし、寝ないし…
人が変わったみたいに作品にだけ深く没頭して、他のことが全く見えなくなる。




期限に余裕がある時はそんなことないんだけど…
どうしても日にちが迫ってくると壊れてくるんだよな。






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