5つの欠片
「いい?詩。男は皆オオカミなの。」



「和くんも?」



「当たり前でしょ。俺、男だもん。」



「そっか」



「ヒツジみたいに見えても中身はオオカミなの。だからあの時、襲われててもおかしくなかったんだよ。ね、分かった?」




詩の髪の毛を梳きながら諭すように喋る。
詩はゆっくりと頷いて、お腹にある俺の手をぎゅっと握った。




はぁ…、ほんとに危なっかしいったらありゃしない。
この話を留学先で聞いた時は、ほんとに倒れるかと思った。




全く悪気もなく電話で話す詩の声が逆に残酷だった。
もちろん、次に帰ってきた時ちゃんと話聞いてしっかりお仕置きしたけど…





詩はどこまでわかってるんだか…
とにかく、個展が近いこの期間は一番危険だな…




腕の中で詩がビスケットを美味しそうに噛んだ。




ったく、本当マイペースなんだから…
俺がどんだけ心配してんのか分かってんの?




天使のような顔して悪魔なんだから…
許さないよ、詩?






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