5つの欠片
時計の音とビスケットを噛む音が響く。
俺はコーヒーに手を伸ばそうとした詩の耳を軽く噛んだ。



「...ん?」



ふわっとした愛嬌のある顔が俺を見上げた。
目に入れても痛くないってこーゆーことゆーのかな...?



俺は詩のお腹でくんでいた腕で詩を持ち上げ、くるっと反転させた。
詩の肩に顎を乗せて、ぎゅーと強く抱く...




まるで人形みたいにふわふわで気持ちよくて、あったかい...




詩の顎を持ち上げて、そっと唇を重ねた。
規則正しく並ぶ詩の歯の隙間から舌を入れると、粉々になって少し湿ったビスケットに出会う。




詩からビスケットを奪って唇を放すと、詩はちょっと拗ねたように俺を見つめた。



「なに?」


「和くん、いじわる」


「そう?」


「最後のだったのにー!」



俺を見つめて怒る詩の頬を右手で引っ張ってやる。
赤く染まってる頬に、への字に曲げた口。




本当かわいい...
怒ってる時まで可愛いとか反則でしょ?




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