5つの欠片
もう1度耳たぶを口に含むと、詩がぶるっと震えて俺のシャツを掴んだ。
そして肩の上に頭を置くと、ふぅーと深いため息を漏らした。




「和くん、ひどいよ...」


「......うまかった?」



「ううん…苦い......」



「詩のが甘すぎるんじゃない?」



「ううん…おいしい......」



「じゃあ、ちょーだい?」



詩が素直にマグカップを持って、俺の口に運んでくれた。



でも、流れてくる液体はやっぱり甘くて...
さっき舐めたブラックの苦さが一瞬で消えた。




チョコレートを溶かしたようなコーヒーは、少し詩の舌の味に似てる...



詩が口直しのように飲もうとしたコーヒーを奪う。
詩の手の届かない所に置くと、恨めしそうに俺を見つめた。




「ほら、詩のはこっちでしょ?」



そう言って笑顔で詩に俺のマグカップを渡した。





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