5つの欠片

「部屋」

「あーもう!
 間に合わないーっ!!」



「後、5分しかないなんて遅刻しちゃうー!」



さっきから詩が1人で喋って騒いでる。
俺の隣を走って通り過ぎて、ちっさな風が巻き起こった。



「もう!
 和くんなんで笑ってるの!?」




あ、怒りの矛先がこっちに向いた。
こんな理不尽に怒られるなんて信じらんない。




「詩、セーター逆じゃない?」



どう見ても、裏表逆。
タグがもろに外出てるし...



「えーっ! 
 もう、和くん早くゆってよー!」



慌てる詩が超可愛い。
ずっとちょこまか動いてて、まるで小動物みたい。
急いで脱ごうとしてるけど、全然脱げてないし。




「詩、焦りすぎ。
 はい、ばんざいして?」



暴れる詩を後ろからふわっと抱きしめて耳元でそう言うと、詩は一瞬固まったけど素直に腕を上げた。




セーターを詩の頭から引き抜いて、裏返してからまた着せてやる。






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