5つの欠片
「…どうしたの?真くん」





落ち着いた声で言う結羅はされるがままになっていた。
お玉で鍋をかき混ぜる右手だけがぎこちなく動く。




「動きにくいよ…」





少し呆れたように笑う結羅。
そんな結羅の態度に余計胸が苦しくなる。




だけど、こうせずにいられないんだよ…
結羅の肌に触れてたい…ずっと…





「真くん?」





心配するような声で名前を呼ばれる。
結羅が腕の中で少し顔を上にあげて俺の目を見つめてるのが分かる。





たけど、俺は結羅の目を見れずに言葉を発するのが精いっぱいだった。





ただ願うのは一つだけだよ…





結羅……結羅…





「もうちょっと…こうさせて…」





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