5つの欠片
食器を片して、洗濯機を回す。
その間に掃除機をかけて、洗濯物を畳む。




頭の中でこれからの流れをシミュレーションする。
よし...それでいっか。




俺はさっそく手に持ってる食器を流しに運んで、洗い始めた。
あ、スポンジ変わってる。
前までお気に入りだって言ってた苺型のスポンジだったのに。
なんでだろ?




不思議に思いながら、四角い緑色のスポンジに洗剤をつけて泡立てる。
もふもふの泡が出来上がったのを見計らって、お皿を洗い始めた。




俺は日本に帰ってきたら必ず1回は詩の部屋の家事をする。
まぁ、詩が壊れてる時はせざるを得ないんだけど...
今みたいに元気な時でも、1回はやる。




家事が詩の生活を教えてくれるから。
どんな風に過ごしてるのか、詩の欠片を教えてくれる。




ほんとに些細なことで、さっきのスポンジだったり、新しい服がふえてたり、破られた虹色の絵があったり...
だけど、それを見るだけで、ほんの少し俺が居ない時の詩を知ることができる。




できる限り電話してても、やっぱり分からないことは多い。
詩のことだから、ムリして明るく振る舞ってることも多いし...
詩の言葉の裏側を読みとりたい...





それをするには、家事は最高の手段だったりする...





俺はスポンジを持ったまま置いてあるチェロの写真を見つめた。
詩が写真を見て想像するように、俺も詩を想像する...




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