5つの欠片
その後は実家に戻って荷物を整理してから、チェロを弾いた。
詩の部屋では防音がゆるいからいつもあまり弾けないし、休んでる分莫大な量の課題曲が出てるってのもあって、気づいたら陽が傾いててびっくりした。




午後5時…
詩の家の最寄駅についた頃にはそんな時間で、街が夕焼け色に染まってた…





キラキラ輝く夕陽。
オレンジ色の雲。
子どもたちの笑い声がどこからともなく聞こえる。




詩の住む町はこんなにも綺麗で美しい…
この町の温かい景色は詩にぴったりだ…





詩の家に向かって歩いてると、目の前にちっさな女の子が見えてきた。
栗色の髪の毛に、見覚えのある服装…
見間違えるワケない。
俺の大事な詩ちゃん…





詩は重たそうな荷物を抱えて、誰かと電話しながら俺の前を歩いていた。
左手に持ったビニール袋をぶらぶらと揺らしながら、楽しそうに歩く詩。





気配を消して、ゆっくりと詩に近づいていくと、喋ってる詩の可愛い声が聞こえてきた。




「…うん。…うん。…だよ。…ん。
 じゃあ…、…亮ちゃんに……するね。」




途切れ途切れの言葉が聞こえる。
りょうちゃん…
そんな奴初めて聞いたな。
誰だろ?男?




「…うん。あ、それは亮ちゃっ……?!」





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