5つの欠片
頭の中に?が浮かぶ。
いや、別にちづちゃんが来ちゃいけない訳じゃないんだけど...



俺と付き合い始めてからは1回も来たことがなかったから、なんか変な感じで...
客として座ってるのが、なんだかもどかしい...



見慣れた背中に上品に巻かれた髪の毛。
すっと長い腕に綺麗なくびれ、そしてすらっと伸びた細い脚...



どこをとっても、ちづちゃんで後ろ姿でも見間違う訳ない。
俺の大切なヒト...




俺はゆっくりとカウンターに戻った。
いや、と言うよりは、勝手に足が動いたっていう方があってるかもしれない。




こっちをぱっと見たちづちゃんは、ビールを片手に大好きな顔で笑った。



「ふふ...来ちゃった...」




少し恥ずかしそうにそう言うちづちゃんがたまんなくて...
思わず触れたくなる衝動を無理やり抑える。




だめだ...
仕事中なのに...どうしよ......




そんな俺をよそに早くも2杯目のお酒を頼んでるちづちゃん。
2杯目は聞かなくても分かるよ、店長のオリジナルカクテルでしょ?




頼んだものはやっぱり予測通り。
ちづちゃんは目尻を下げたうっとりした顔で店長が振るシェイカーを見つめていた。




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