5つの欠片
「じゃあ、大地!後これ頼むな。」



キッチンから出てきた櫂はもう私服だった。
目の前で店の鍵がゆらゆらと揺れる。



「ホールの掃除まかせたから」



櫂は耳元でそう囁くと、にこっと笑ってちづちゃんの方を向いて会釈してから出て行った。
続いて出てきた店長も靴を履き替えてる。



「マスター、帰っちゃうの?」



その様子が見えたのか甘えたのちづちゃんの声が響いて、背筋が震えた。



「今日はもう閉めるよ。酒なら大地に作ってもらったらいい。」



店長は優しい瞳でそう言って、笑った。
ちづちゃんもお返しのように優しい笑顔を浮かべた。



なんだよ...
なんか2人の世界じゃん...



「またな、千鶴」



「ばいばいー」



2人で言葉を交わすと、店長は店を後にした。
名残惜しそうに扉を見つめてるちづちゃんがしゃくに障る...





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