5つの欠片
カウンター越しにちづちゃんの腕を掴んで引っ張った。
違う方に持っていたサワーの氷が音を立てる。



「なんでそっち向いてんの...?」




店長に向いていた視線が俺に戻ってきて、とろんとした目を見つめる。
びっくりしてた顔から分かったような顔に変わっていくのが分かる。




「マスターはおじいちゃんみたいな感じよ。」




落ち着いた声で微笑みながらそう言うと、グラスに口をつけて1口含んだ。



なんだよ、それ...
なんかますます嫌だ。



わざわざ特別って言われてるようにしか聞こえなくて、頭に血がのぼりそうになる...


「ふーん。そう。」



俺は掴んでいた手首を放すと、目の前にあったグラスに水を注いだ。
飲もうとして口に近づけると、ちづちゃんの細い手にその腕を捕まれて唇を重ねられた。




「...っん......ん......」



ちづちゃんの口の中からサワーが流れ込んできて、喉を冷やしていく。
柔らかくて熱い唇と対照的な舌が入り込んできた...






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