5つの欠片
ジャズの止まった静かな店内に、いやらしいリップ音だけが響きわたる…



「…ん………っんん…」



限界を示すように、ちづちゃんの言葉が漏れた…
薄目を開けると、小刻みに肩が震えてるのが見える…



俺は両手をちづちゃんの肩に置いて、ゆっくりと左手の力を緩めた。
自然とちづちゃんの上半身がカウンターの奥に戻っていく。



「…ハァ…ハァ…ハァ……」




いつもより苦しそうに呼吸するちづちゃんの顔を両手で包んだ。



ごめんね…
だけど、あんな瞳で店長のこと見ないでよ…



俺だけのちづちゃんで居て……




ちづちゃんの下唇を口に含んで、甘噛みする。
まだ甘いハチミツが残ってて、小さな子どもみたいに夢中で掬いあげた。



甘いハチミツは誘惑の罠…
魅惑の蜜は俺を狂わせる……




味を知ってしまったらもう戻れない…
甘くて深い蜜の味……






「……ちづちゃん……好きだよ………」





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