【短編】俺様彼氏
2
『平野の余裕…壊したくない?』
あれから多田くんに言われた言葉が
頭から、ちっとも離れない。
多田くんは、何考えてるんだろう…?
優真は、確かにいつも余裕なんだけど、
余裕を壊すって……どうやって?
「……ぃ!…おいっ!」
「ひゃっ?!」
優真の声に現実に引き戻される。
「何、考えてんの?」
あたし今、優真と帰ってるんだった…。
「え、何も……考えてないよ?」
「……お前さあ「三原っ!!」
優真が何か言い掛けたのが気になったけど、
呼ばれた方を振り返った。
「多田くん?!」
そこには、息を切らした多田くんがいた。
「ど…どうしたの?!そんなに走って…」
「ノート!!」
「えっ?!」
「この前、三原が俺に『古典のノート書けてない~』って言って、泣き付いてきたじゃん」
それ、今日提出なんだけど?
と、呆れたようにあたしを見る。
「あ~!!すっかり忘れてた!!ノートも家だよ…
多田くん、もっと早くに言ってよぉ!!」
「いや、被害者は俺だから!」
そう言って、多田くんは
あたしの手を引っ張った。
「とりあえず、三原いつも歩きだろ?
俺、自転車だからそれ乗って家帰る!んで、急いで写して
学校持ってきて提出して!」
俺、古典の単位やばいんだって!
と言って、手を繋いだまま
多田くんは歩き始めた。