君想ふ聖夜
別に、と言いつつも続ける。
「家にある池には、どうして鯉が居ないのか不思議に思っただけ。」
「それはまた、豪邸に住んで居はるんですね。」
「…別に、」
そういう意味で言ったわけではない、そう続けようとした言葉を飲み込んだ。
ただ純粋に不思議だと思ったことを口にしただけなのに、それを皮肉ととられるのは不快。
しかし、聖はそれを訂正することも面倒な質で、分からない奴には一生分かってもらう必要は無いと考えた。
そして、静綺の姿が浮かんでは消える。