愛玩~夢幻の秘密~
このまま郁人に全てをさらけ出して。
助けを求められたら。
どんなに楽だろう?
だけど…2人のために絶対に言えない。
あんなヤツのために。
この温もりを壊したいなんて思わない。
「…い…いく…と。」
ほんの少し離れた唇。
ゆっくりと目を開けて。
幻で消えてしまわないよう。
郁人を確認するように。
そっと頬を両手で包み込んだ。
「おやすみ。」
そう言って郁人が笑って。
目を閉じた。
「ごめん。」
言葉になんてなってない。
郁人には聞こえてないけど。
言わずにいられなかった。
悔しくて。
悔しくて…。
何よりも悔しいのは…何もできない自分自身。
こんなに…こんなに優しい郁人を
絶対に傷つけたくない。
あたしの中で、何かが変わりそうな気がした。