愛玩~夢幻の秘密~
「葵織には?」
もし、葵織が知ったら…。
あんなに自分を傷つけるような状況で。
こんな話…出来るわけがない。
「好きにしろ。そろそろ、知ってもおかしくないからな。でも、結婚をいまさら断る理由…聞いたらアイツはどうなるか?」
そんなの知ってる。
なのに、本当のことを俺から話せと言うのか?
「言うことはない…俺の口からは言えないだろ?」
逃げることしか出来ないのか?
葵織をこれ以上傷つけるくらいなら。
俺は静かに消えるしかない。
葵織に気持ちを打ち明けた日。
俺はとっくに出て行ってたはず。
少し…時間が遅かっただけ。
ギュッと閉じた目の中。