愛玩~夢幻の秘密~
何かのタガが外れたように。
ズルリとその場に崩れ落ち。
涙を抑えることが出来なくて。
帰って来ない郁人が。
もう、終わったと言わんばかりに。
目の前のエレベーターホールの電気が。
オレンジ色に光を隅々まで照らし出して。
誰もいないのが一目で分かった。
「…ねえ。最後くらい何か言ってよ。嫌いとか…汚いとか…罵られた方がマシだった。」
誰もいないガラスドアの前で。
さっきここにいた郁人に問いかけるように。
ポロポロと大粒の涙をレンガ造りの床にこぼしながら。
伝わることのない思いをぶつけた。