愛玩~夢幻の秘密~
「悪かったな。柚夢じゃなくて。」
「えっ?どうして?」
急にそんなことを言うかな?
「別に。俺から言うより、葵織の方が良くわかってるだろ?」
今日の約束の事か。
別に…あたしは柚夢なんかより。
郁人が来てくれた方が嬉しかったけど…。
って、言えればいいのに。
久しぶりの郁人と会えて話せたのが嬉しくて。
恥ずかしくて言えなかった。
そのまま会話もなく、いつの間にか家に着いてた。
このまま車から降りたら。
また郁人と話せないんだよね?
玄関の前に車は止まってるのに。
シートベルトを外せても、ドアを開けようと手は伸びてくれなくて。
沈黙のままうつむいてる。
「早く降りろよ。」
郁人の冷たい言葉が飛んできて。
ハッと我に返った。