愛玩~夢幻の秘密~

顔を上げて振り返ると、郁人が立ってる。


「ど…どうして?仕事…。」


涙声で上手く言葉にならない。


「カゼ引かせたら、柚夢に怒られるだろ?」


そう言いながら、持ってきてくれたバスタオルで頭を拭いてくれた。


「あ…ありが…とう。」


まだ普通に話せない。


車のエアコンで温まったはずの髪も指先も。


郁人が触れるたびに…。


熱いくらい火照ってる。


「お風呂入って温まれよ。」


部屋から出て行こうとした郁人の背中。


いつもの光景が戻ったみたいで嬉しいよ。


「うん。…ごめんね。忙しいのに。」


やっと言葉になった。


「大事なお姫様にカゼ引かせたって、柚夢に怒られたくないからな。」

「ねぇ、どうして柚夢なの?」


さっきからそればっかり。


だいたい、迎えに来なかった柚夢が悪いんじゃん。


「…昨日の晩…優しかったんだろ?」


えっと…


ちょっと待って…


それって今朝の会話だよね?


優しかった…


優しかった…


やさし…

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