ハチミツ×シュガー



 呼び声に、私は思い切り反応してしまった。



 学年一可愛いという岬 理恵ちゃんが、甘い声を出して西城くんにベッタリとくっついていて。
 楽しそうに何かを話してる隣で、西城くんは眉間にシワを寄せ、何故か苛ついた感じ……。


 相変わらず恐いわ。




「――如月っ」


 私が気付かれないように隣を盗み見てると、斉藤くんがおっきな声で私を呼んだ。
 その声にビクリとしながら、慌てて斉藤くんを見た。



「あ………何?」


 平常心、平常心。



「あぁ――…ごめん。忘れたわ」


 苦笑いで頭をかく斉藤くん。
 その姿に、さっきまで落ち着きなかった心が、何故か静かになって。


「ふふっ 思い出したら教えて?」


 私の言葉に小さく頷いた斉藤くん。
 それを見て、私は席を立つとロッカーへと足を進めた。




 その時……

 西城くんと斉藤くんが私の席を中心に睨み合ってたなんて……知る由もなく。


 私は、次の授業で使う辞書を出していた。




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