ハチミツ×シュガー



 聞こえた声に、彼を見ると、薄目をあけて口の端を上げていた。


「あっ……や…っ

 ――起きてたの?!」



 慌てて伸ばした手を引っ込めようとしたけど……あっさりと彼の手に捕まってしまった。



「寝てたよ?」


 ニヤリ笑った彼。



 もう、絶対、嘘だ。


「……嘘つき」


「ははっ 大事な獲物は安心させてから捕まえるんだよ」


 効率的だろ?と、私の前髪をそっと横にズラした。


「獲物って…」


 なんだか、ねえ?



「本、読まねぇの?」

「……読みます」



 西城くんは、少しむくれた私を見下ろすと小さく笑って、私の手を引き、本棚の中へと足を進めた。



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