ハチミツ×シュガー



「なんで、怒ってるの?」


 抱き締められたままのせいで、声はくぐもってる。



「はぁ……普通さ、俺といる時に他のヤツと帰る約束する?

 ちょっと、…いや、かなりムカついた」



 ああ、そうか。

 ……確かに、酷いわよね。



「あの、――本当にごめんなさいっ」


 言葉だけじゃなく、気持ちが伝わるように、彼の背中に手を回した。



「ふっ……いや、俺も恐がらせてごめん」

 鼻から抜ける笑いをして、私の首筋にキスを落とす。


「ひゃあっ」
「くっくっくっ
 これで許してやる」


 くすぐったくて、恥ずかしくて。
 私が真っ赤になって、口をパクパクさせてるのを笑いながら、足元のカバンを持った。



「ほら、口尖らせてないで行くぞ」


 さっきまでの不機嫌が嘘のように、意地悪くニヤリとすると、カバンを私に差し出した彼。



「西城くんも一緒に帰るの?」



「……悪いけど俺の獲物だからな」



 その一言が小さな声過ぎて……私には聞き取れなかった。



< 140 / 771 >

この作品をシェア

pagetop