ハチミツ×シュガー



 斉藤くんがいなくなっても、西城くんは皇を見ていた。


 その視線に気付いた皇は、眉をピクリと動かして

「楓におかしな事してみろ。
 俺が許さない」

 滅多にない低い声で、彼を睨み付けた。



 西城くんはその事には触れず、『また明日な』と私に微笑むと、左に曲がり帰って行った。






「西城だけじゃなくて斉藤もか……」




「え? 何が?」


「いや。何でもない。
 ほら、早く後ろ乗れよ」


 さっき西城くんに向けていた顔が嘘のように、笑顔で私を後ろの席に座らせた。


 いつものように、皇の背中に寄りかかりながら二人、マンションへ帰った。



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