ハチミツ×シュガー



 本棚の奥に行けば行くほど、静かになる。


 やっぱり落ち着くな……。



 目的の本棚の前に立ち、上からゆっくり本を選んでいく。


 ……うーん…。どうしよ。


 このあたりは全部読んでるし……。



「む―――…」


 右手の人差し指を背表紙に当てながら、左から右へ流していく。



 ……これにしようかな。


 ある一冊を取って、来た道を戻った。


 図書室は冷房がついてるはずだけど、放課後は消しているため蒸し暑い。
 本を机に置いて、窓から上半身を風に当てた。



「――あ、れ?」


 あの小さな背は……斉藤くんかな?



 窓からは、野球の練習中なのか、斉藤くんと数人が水飲み場で集まってるのが見えた。


 斉藤くんとは最近よく話すようになって、たまに一緒に帰ったりしてる。

 彼はまだ部活中にもかかわらず、同じ野球部のユニフォームを着た子達と水の掛け合いをして遊んでいた。



「ふふっ 子供みたい」


 ――みんな楽しそうに大声で騒いでる。




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