ハチミツ×シュガー



 つけていたマスカラがポロポロ取れて……スッピンに戻った。



「……私だ…」


 鏡に手を伸ばし、そっと触れる。

 そこには、数ヶ月前の冴えない私がいた。





 こんな私に西城くんは『好き』だと言ってくれた。

 こんな、夢みたいな事……



「……おい」
「ひゃぁっ」


 急に呼ばれてビクリと体を震わせると、

「お前、何してんの?」



 入り口の壁に寄りかかり、腕を組んで立ってる彼が呆れた顔で私を見ていた。



「――あ…っ」


 咄嗟に、顔を真っ赤にして俯いた。

 鏡に映った自分をマジマジと見てるなんて……気持ち悪いよね。



「終わったなら帰るぞ」

 言ったと同時に、彼が立ち去る気配がして慌てて顔を上げたら。

 そこにはもう、彼の姿はなかった。



 急いでトイレから出たら、少し先に、彼が立ち止まって待っててくれてる。



「早くしろ」

「――は、はいっ!」




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