ハチミツ×シュガー



「いや…」


 皇に軽く返事をした後、私を見て、


「今日は帰るから。何かあったらメールして。

 ……何もなくても」


 久しぶりに見た彼の優しい笑顔。

 私がまた、溢れ出しそうな涙を堪えていると、すぐに十字路を曲がって行ってしまった。


 慌てて名前を呼んだけど、彼は片手を上げてそのまま歩いて行ってしまう。




 ――残った私達。


 皇は私の気まずさに気づいているのか、頭をポンポンと二回軽く叩いた後、マンションへ歩いて行った。

 私もゆっくりと、後ろをついて行く。







 マンションのエントランスにある鍵穴に鍵を差し込むと自動ドアが開き、私を置いて先に行ってしまった。


 急いでついて行くと、そのままエレベーターのボタンを押し、エレベーターの到着を待つ。



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