ハチミツ×シュガー





 そんな私達の姿をジッと見つめる斉藤くん。




「ねぇ、」


 少し抑えた声で、斉藤くんは呼ばれた気がした。

 彼は声の方へ少し視線を流すと、彼の横には真弓が立っていた。



「ん? 呼んだか?」


 何事も無かったように笑顔で聞くけど――

 ……真弓の表情は、少し険しかった。




 しばらく見つめ合った後真弓の口が開き、

「辛くないの…?」

 それは、戸惑いと覚悟をグチャグチャに混ぜ込んだような、不思議な声色で。

 斉藤くんの眉が、一瞬下がった。



「ちゃんと……諦めついたの?」


 けして好奇心で聞きたい訳じゃない。

 ただ、クラスメイトとして、友達として。真弓が純粋に知りたかった事だった。




「どうだか……な…」


 斉藤くんが真弓から私達に視線を移して、呟いた。




< 522 / 771 >

この作品をシェア

pagetop