ハチミツ×シュガー



 そのままゆっくり彼の手を取りボートに乗ると、係りの人はロープを素早く外し、そのまま船はフラフラ動き出す。

 西城くんは慣れた動きでオールを手に持つと、ゆっくりと漕ぎ出した。


 ――こんなに簡単に進むもの?


 私は黙って彼の動きを見てると、


「……見過ぎ。ちょっと周りの景色見ててよ」


 そう言われてしまった…。


 私が何となく周りを見渡してると。


「あ…」

 遠くで皇と洋子ちゃんのボートを見つけた。



 洋子ちゃんは皇から漕ぎ方を教わっているのか、オールを持ちながら何やら話してるみたい。
 ……ビクビクしながら(笑)。


 私は何故か胸の中が暖かくなりながら、その姿を見ていた。

 ――その意味が分かるのは、まだまだ先なんだけどね。





「如月?」


 西城くんに呼ばれて慌てて彼を見ると、

「ニヤニヤして気持ち悪いんだけど。何か思い出したのか?」

 ……なんて、聞いてきた。



 ――仮にも彼女に向かって気持ち悪いとか、普通言う?



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