ハチミツ×シュガー




「楓…まだかかる?」



 掠れた声で、体勢はそのまま。彼は手を伸ばして私の頬を撫でた。



「―――っ もう終わった…!」



 彼の手は暖かい。

 私の頬を撫でる指に、私の全神経が注がれる。



「じゃあ、帰ろうか」


 ふわり、彼が柔らかい笑みを見せる。
 向かいの机に座ってた女の子が、それを見て顔を真っ赤にさせてる。



「う、ん…」


 ……かなり、複雑。


 彼の笑顔の破壊力はハンパない。当の本人は気づいてないけど……。


 私は小さく息吐くと、そのまま机の物を片付けて帰る用意をした。






「志望校、どこにした?」


 静かに図書室を後にすると、彼は廊下を歩きながら首を傾げる。



「N大にしたの」


 今までのらりくらりで決めかねてた大学。

 今の成績と推薦枠を比べながら、やっと大学を決めた。


 ……なのに。


「――だと思った」



 彼は当たり前のように言ってのけた。



< 544 / 771 >

この作品をシェア

pagetop