ハチミツ×シュガー
「楓…まだかかる?」
掠れた声で、体勢はそのまま。彼は手を伸ばして私の頬を撫でた。
「―――っ もう終わった…!」
彼の手は暖かい。
私の頬を撫でる指に、私の全神経が注がれる。
「じゃあ、帰ろうか」
ふわり、彼が柔らかい笑みを見せる。
向かいの机に座ってた女の子が、それを見て顔を真っ赤にさせてる。
「う、ん…」
……かなり、複雑。
彼の笑顔の破壊力はハンパない。当の本人は気づいてないけど……。
私は小さく息吐くと、そのまま机の物を片付けて帰る用意をした。
「志望校、どこにした?」
静かに図書室を後にすると、彼は廊下を歩きながら首を傾げる。
「N大にしたの」
今までのらりくらりで決めかねてた大学。
今の成績と推薦枠を比べながら、やっと大学を決めた。
……なのに。
「――だと思った」
彼は当たり前のように言ってのけた。
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