ハチミツ×シュガー



「……ふざけるなよ」



 彼の滅多に聞かない、低い声。



「ふざけてごめんね?

 でも、皇くんももうくだらない嫌がらせやめてね?」



 私は笑顔のまま。


「西城くんの事はとっくに終わってる気持ちだから。……楓を不安にさせたくないの。

 だからもう、忘れてね。
 ――全部…」



 そのまま彼を置いて立ち去る、

 はずが――…



「――本当に…?」


 後ろから抱き締めてきた彼の腕に、ギュッと力が込められた。


「本当にもう……何とも思ってない?」


 彼の掠れた声が、私の鼓膜を震わせる。



「……思ってないよ…」




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