ハチミツ×シュガー



「はぁ…。 お前ずっとそんな風に思ってたの?」


 優しく、ゆっくりと話す彼。



「――違うか。思わせてたのは俺だな。

 ……ごめん」


 ギュッと力を込めた彼の腕に、ソッと手を絡ませた。



「そのままで聞いてほしいんだけど……。

 俺は楓に対して特別な感情は持ってなかったよ。今も、昔も」


 言われても。……今は何の反応もできない。



「確かに兄妹の時間は途中からだったけど、かなり小さいうちに兄妹だと聞かされてた俺は、あの頃はすでに妹としてしか見えてなかった。

 まぁ、普通の兄妹よりも特殊だったかもしれないけど…。

 でも、あの時点で傷ついたのは“男”としての俺じゃなくて、“見守ってきた兄”としての俺。

 兄妹2人で寄り添って生きてきた中で、楓は西城という、俺以外の“守る男”に出会った。
 それが急に取り残されたような気がして……寂しくて辛かったんだ」



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