ハチミツ×シュガー



 彼女はこの一週間、友達だと思われる佐藤としか話していない。


 他の子とは、目も合わさない。



「ねぇ彼方〜 今度の日曜日なんだけど」
「うるせぇ。 あっちに行け」


 イライラする。


「おい、彼方! 岬ちゃん泣きそうだぞっ」



 知るかよ。



 俺の視線の先には、彼女と佐藤が何やら楽しそうに話してる姿。


 ……そんな女に笑顔なんて向けなくて良いから、俺に笑いかけろよ。




「…俺、今日はもう帰るわ」


 本当に、イライラする。


ガタッ

 俺の椅子を引いた音がかなり大きかったのか、一瞬シン…とする。


 ――その瞬間。


 彼女と俺は一瞬だけ目が合った。




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