ハチミツ×シュガー
『彼方、今どこにいる?』
低い、艶のある声。
俺なんかよりも頭が良くて、見た目も頭も大人で色気のあるコイツには、いつも敗北感を味わっている。
「今は……あと5分で事務所前」
秋風が吹く、10月。
この電話の相手は、数ヶ月前に5年越しの片思いを見事実らせて、頭の中は時季外れの桜が咲いている。
――まぁ、おめでたい話なんだが。
『そうか。 じゃあ急いで戻ってくれ』
――は?
それだけ言うと、一方的に電話を切られた。
……今日もなんかあったのか…?
プライベートが充実すると、仕事もはかどるらしい皇は、迷惑な位に仕事を見つけてくる。
「……勘弁してよ…」
俺は溜め息を吐いて、携帯を仕舞うとそのまま足を早めた。
その瞬間また、
アイツへの電話を忘れた――…
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