ハチミツ×シュガー
俺はキッチンの角に立ち、棚に寄りかかりながら彼女を見ていた。
彼女は上の棚から出した紅茶バッグをマグカップに煎れて、ゆっくりと、お湯を注ぎ入れた。
そして角砂糖を1つ摘むと、青いマグカップへ入れ、スプーンでかき回した。
それは、いつもの俺の飲み方だった。
――瞬間…。
こみ上げてくる気持ちを抑えきれなくて…。
「か、なた…っ?」
気付いたら、彼女を後ろから抱き締めていた。
「あ…の……っ」
彼女は、訳が分からず戸惑ってる。
「――黙って…」
掠れた俺の声に、彼女は小さく息を飲んだ。
彼女の、匂い。
彼女の柔らかさ。
彼女の、温かさ。
「彼方…」
静かに俺の名を呼ぶ彼女の声は、震えている。
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